相続対策といってもいろいろな方法があり、何をどうすればいいのか分からず困っている方は多いと思います。
相続対策には「遺産分割対策」、「納税資金対策」、「節税対策」などがありますが、ご自身にあった対策を選定し、可能な範囲で実行していく事が大切です。
この記事では「節税対策」の一つである「生前贈与」について解説していきます。
目次
生前贈与のメリット・デメリット
生前贈与とは、生きている間に子供や孫に財産を贈与する事を言います。
基本的には相続税の節税対策に用いる事が多いです。
生前贈与にはいくつか活用方法がありますが、「暦年贈与」といって110万円の基礎控除枠を利用し、長期的に毎年110万円ずつ贈与して、贈与税を払わずに財産を子供や孫に移転していく方法が多く利用されています。
メリット
・子を経由せずに孫へ贈与する場合、相続を一回飛ばすことになるので、結果として相続税の課税を一回減らすことになる。
・「相続時精算課税制度」を利用した場合、生前贈与した財産は、後々相続税評価額が上昇したとしても、上昇額が相続財産の評価に影響する事がない。
・本人の意思で、確実に目的財産を目的の相手に移転させる事ができる。
デメリット
・「暦年贈与」を考える場合、一回、二回の贈与では効果が出にくいので、十数年掛けてコツコツと贈与を行うなど長期的な視野が必要となる。
・多額の贈与は累進度合が高いことから、贈与税の負担の方が相続税の負担よりも高くなってしまう。
・相続税には、相続開始前3年以内に行われた贈与についての生前贈与加算がある為、結果相続対策とならない場合もある。
生前贈与の特徴と活用方法!〜相続対策〜
相続対策の中でも節税対策はかなり重要となります。
効率的に少しでも多くの財産を残すには、早い段階で多角的かつ長期的な視点で節税対策を検討していく必要があります。
生前贈与は他の節税対策よりも比較的簡単に利用する事ができます。
生前贈与の対象者
生前贈与は、相続人に限らず孫や相続人の配偶者などにも財産を移転する事が可能です。
贈与による相続対策において、対象者(受贈者)は多ければ多いほど有効です。
生前贈与の対策期間
生前贈与の場合、その性質上、対策期間は長期的であるほど相続対策として効果を発揮します。
一度に多額の贈与を行うと贈与税の負担が大きくなるので、基礎控除枠などを利用しながら長期的に行う方が良いです。
非課税制度等の活用
相続対策に有効な非課税制度を紹介します。
積極的に活用していきましょう。
贈与税の配偶者控除
居住用不動産等を配偶者に贈与しておくと、将来相続が発生しても贈与した財産は原則として相続財産に含まれないので、相続税の課税価格を抑える事ができます。
住宅取得等資金贈与の非課税制度
住宅取得等資金贈与の非課税制度をうまく活用すれば、相続税対策だけでなく受贈者の生活面においてもメリットがあります。
住宅取得等資金贈与の非課税制度については下記の記事をご覧下さい。
相続時精算課税制度
相続財産に加算する生前贈与財産の価額は贈与時の時価によります。
この時価の差異を利用して、時価の上昇が予想される財産を贈与しておくことで、相続発生時に相続税の課税価格を実質的に減らす事ができる場合があります。
生前贈与をする財産の選定
どの財産をどのタイミングで贈与するかも大切な要素となります。
将来的に評価額が上昇しそうな財産から優先的に贈与する
将来的に評価額の上昇が予想される財産については、早い段階で贈与しておく方が税金面で有利となる。
財産の評価額を引き下げてから贈与する
例えば、土地は更地の状態よりもアパート等を建築してから贈与すると、貸家建付地としての評価となり、更地よりも評価額が下がります。
また、不動産だけでなく、同族会社株式なども評価額を下げる対策をして贈与すると税金面で有利になります。
評価額の低い財産を贈与する
時価が同じ財産がいくつかある場合、評価額が低い財産から贈与した方が税金面で有利です。
贈与を繰り返し行う場合は金融資産を贈与する
不動産の贈与には登記費用等のコストが掛かる為、何度も繰り返すのは得策とはいえません。
しかし、現金であれば1円、株式なら1株から贈与できるので、贈与がしやすいといったメリットがあります。
さらに、不動産のように無駄なコストも掛かりません。
生前贈与の特徴と活用方法!〜まとめ〜
生前贈与は比較的簡単で、他の節税対策と比べても始めやすいかと思います。
ただ、すぐに大きな効果が期待できるものではなく、闇雲に財産を贈与して逆効果になる場合もあります。
一番大切な事は、生前からしっかりと相続に向き合うという事です。
生前贈与は一つの手段なので、他の相続対策と併用したり、計画的に非課税制度等を活用しながらトータルで結果を出す事が必要です。